寸借詐欺
雨がかなり酷い日の午後の事だった。
横殴りの風雨の中を歩くのは気が重い。
いつもはあまりのらない東急の無料シャトルバスだが、今日はデパートまで乗っていくことにした。
渋谷の駅にはシャトルバス専用の待合所がある。
そこに座ってバスが来るのを待つのだが、私と前後して30代と思われる男性も待合所に入ってきて、私の向かいに座った。
バスが来るまでまだ10分ほどある。
たまたま他にバスを待つ人はいなかった。
しばらくするとその男性が私に話しかけてきた。
「お願いがあるんですが」
「はい?」
「実は財布を落としてしまって、帰るお金が無いんです。身分証明書でもあれば交番でお金貸してくれるんですが、それも財布の中で・・・」
「いくらいるんですか?」 と私。
「千円くらい・・千葉まで帰るので・・」
自分の財布を見ると千円札はないが500円玉が2個あった。そ
れを彼に渡した。
「名前と住所書きます」と彼は言う。
書いてもらったってしょうがない。
「いいですよ、別に」
「でも・・・」
私がもういちど、「いいですよ」と言うと彼は頭をさげて出て行った。
彼が本当にお財布を落としたかどうかは、もちろんわからない。
ただ、後日同じような目にあった友人が結構多くいたと知った。
損害 ・・・かさ一本(強風で骨がめちゃめちゃになった) &500円玉二個
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